火星の席に座った地球。海は凍る? まずは席替えしてみよう。
光は距離の2乗で薄まります(逆2乗則)。距離が1.5倍なら、受け取る日射エネルギーは 1÷1.5² ≒ 44%。ちなみに実際にほぼその席(1.52AU)に座っているのが火星で、届く太陽エネルギーは地球の4割ちょっとしかありません。
このサイトのモデルで計算すると、地球の大気をそのまま持って1.5AUに引っ越した場合の平均気温は約−32℃。「あれ、火星は−63℃じゃなかった?」と思った人は鋭い。火星が地球より大幅に寒いのは、距離のせいだけでなく大気が地球の1%未満しかなく、温室効果がほとんど働かないからです(温室効果の上乗せは数℃程度とされます)。つまり同じ席でも、地球の大気を保てるなら30℃ぶんくらいは「毛布」で稼げるのです。
平均−32℃の世界では、海は極から凍り始めます。氷は白く日光をよく反射するので、凍るほどさらに寒くなる悪循環(アイスアルベド・フィードバック)が働き、最終的には赤道近くまで氷に覆われるかもしれません。実はこれ、SFではありません。地球は約7億2000万〜6億3500万年前(クライオジェニアン紀)に「スターチアン氷期」「マリノアン氷期」という、赤道まで凍りついたとされる全球凍結(スノーボールアース)をすでに経験しています。
全球凍結の時代も、生命は氷の下の海などで生き延びたと考えられています。そして脱出ルートも実例があります。氷に覆われても火山は二酸化炭素を吐き出し続け、CO₂が大気にたまって温室効果が強まると、氷は一気に溶けたと考えられているのです。統合シミュレーターで「距離1.5AU+大気を4〜5倍」にしてみてください。気温が15℃前後まで戻るのを、このサイトのモデルでも確認できます。距離のハンデは、大気しだいで取り返せるのです。