太陽が西から昇り、風と海流が逆転する。すると——サハラ砂漠が、緑によみがえる。
地球が今と逆向きに回りだしたら、いちばんわかりやすい変化はこれ。太陽が西から昇り、東に沈むようになります。時計でいえば、ニューヨークがロンドンより時間が進む——今とは東西が逆の世界です。でも本当におもしろいのは、空ではなく地上で起きる大変化のほうです。
自転の向きは、地球上を動くものを曲げる力(コリオリの力)の向きを決めています。だから自転を逆にすると、貿易風や偏西風といった風の向きも、それに押される海流の向きも、まるごと逆転します。風と海が世界中の熱と水を運ぶ経路が変わるので、どこが暖かく・どこに雨が降るか、という気候の地図そのものが描きかわるのです。実際にドイツの研究チームが、地球を逆回転させた世界を最新の気候モデルで7000年ぶんシミュレーションしています。
そのシミュレーションでいちばん驚かれた結果が、これ。世界最大のサハラ砂漠が消え、北アフリカと中東が緑と雨の土地によみがえったのです。かわりに、南米のブラジル・アルゼンチンやアメリカ南東部が、新しい砂漠になりました。砂漠は「その土地が暑いからできる」のではなく、風と海流がどう水を運ぶかで決まる——逆回転の地球は、その事実をあざやかに見せてくれます。研究者も「なぜ現実のサハラは砂漠で、逆回転だと砂漠でないのか」を考えさせられた、と語っています。
変化は海の底にも及びます。今の地球では、大西洋を南北に巡る大きな海の流れ(大西洋の深層循環)が熱を運んでいますが、逆回転の世界ではこれが弱まり、かわりに太平洋に強い循環が生まれるとシミュレーションは示しました。さらにインド洋では、いまの地球では決して優勢になれないシアノバクテリア(藍藻)が大繁殖するという、生き物の世界の異変まで現れました。自転の向きひとつで、空も、海も、大陸の緑も、住む生き物さえも変わる。地球の姿は、回る向きの上に成り立っているのです。