宇宙の入り口は、たったの100km上。まっすぐ上に道があれば、車で1時間。でも月は? 太陽は? 「宇宙の遠さ」を体で測ってみよう。
「宇宙」は、どこから始まるのでしょうか。空気は上にいくほどうすくなるだけで、はっきりした境目はありません。そこで世界では、高度100kmから先を宇宙とする共通の線が決められています。これがカーマン・ライン。飛行機が翼で飛べるのは、だいたいこの高さまでだからです。100kmといえば、東京から箱根くらいの距離。まっすぐ上に道があれば、車で約1時間、歩いても丸1日で宇宙に着いてしまいます。宇宙は、意外なほどすぐ上にあるのです。
ところが「上」ではなく「先」を目指すと、話は一変します。月までの距離は約38万4400km——地球を30個ならべた距離です。時速4kmで歩き続けると約11年。小学生が出発したら、着くころには大人です。車でノンストップでも約160日。それをアポロの宇宙船は約3日で駆け抜けました。歩けば11年の道のりを3日で行く——「人類が月に行った」のすごさが、足の速さで測るとよくわかります。
次の目的地、太陽まではさらにケタがちがいます。距離は約1億4960万km。歩くと約4300年——縄文時代に出発した人が、まだ着いていない計算です。車で約170年、新幹線でも約57年、ジェット機でさえ約19年かかります。そして宇宙でいちばん速い旅人・光ですら、太陽から地球まで8分19秒。つまり、いま見ている太陽は8分前の姿です。この「地球と太陽の距離」は宇宙のものさし(1天文単位)として使われるほど、基本の長さになっています。
太陽系の外に目を向けると、もう「km」では書ききれません。太陽にいちばん近い恒星でも、光の速さで4年以上かかる距離。そこで宇宙では、光が1年かけて進む距離「光年」がものさしになります。夜空の星の光は、何年も何百年も前に出発した光。太陽が消えても8分は気づけないという話と同じで、星空とは、じつは「過去の光の展覧会」なのです。歩いて1日の宇宙の入り口から、光でも何年もかかる星々まで——宇宙の遠さは、ものさしを取りかえながら味わうのがコツです。