MOSHIMO ZUKAN // FILE 17

🧊 もしも氷が水に沈んだら

氷が水に浮くのは、実は自然界の大例外。この「当たり前」が消えると、湖の生き物は冬を越せなくなる。

テラちゃん今日も平常運転だよ〜
氷は水に…
浮く
冬の湖の凍り方
表面にフタ
水の中の生き物
冬を越せる
氷の密度(液体の水=1.00)
0.92(いまの氷)
👇スライダーをうごかして、じっけんしてみよう
0.80(軽い)1.10(水より重い)
🔎 いまの氷の密度は約0.92。水(1.00)より軽いから浮くよ。固体が液体より軽いのは、自然界ではとてもめずらしいんだ
🎬 テラちゃんげきじょう「氷が水に沈んだら」
ソラ
ソラ氷って水にうかぶのがふつうでしょ? 沈む氷なんてあるの?
テラちゃん
テラちゃん実はね、こおると軽くなる物質はごくわずか。氷は特別な『うかぶ固体』なんだ
ソラ
ソラへえ! もし氷が沈んだらどうなるの?
テラちゃん
テラちゃん湖が底からこおっていって、魚が冬を越せなくなっちゃう
ソラ
ソラ氷がうかぶの、あたりまえじゃなかったんだ。コップの氷が、ちょっと特別に見えてきた。
水は宇宙でも指折りの変わり者の物質。その変わり者ぶりが、生命の星を支えています。

氷を「沈む物質」に変えると、何が起きる?

① そもそも「氷が浮く」ことが、大例外

グラスの氷が浮くのを、私たちは当たり前だと思っています。しかし自然界では、固体が液体より軽い物質はごくわずかな例外で、ほとんどの物質は固体になると縮んで重くなり、沈みます。水が例外なのは、水分子どうしをつなぐ「水素結合」が、氷になるときにすき間の多い結晶構造を作るから。氷の密度は約0.92で、液体の水(1.00)より約8%も軽いのです。ペットボトルの水を凍らせると膨らむのも、同じ理由です。

② もし沈んだら:湖が「底から」凍っていく

スライダーで氷の密度を1.00より重くしてみてください。冬の湖で起きることが一変します。今の世界では、氷は湖面に浮いてフタになり、それより下の水を冷気から守ります。しかも水は約4℃でいちばん重くなる性質があるため、湖底には4℃前後の水がたまり、魚たちはそこで冬を越せます。ところが氷が沈む世界では、できた氷が次々と底に沈み、湖は底から丸ごと凍りついていきます。文部科学省の資料も、もし固体の水が液体より重ければ「湖の水はどこも0℃になって凍ってしまい、魚も生きていられない」と説明しています。

③ 春が来ても、湖はよみがえらない

さらに深刻なのは、その後です。底まで凍った湖は、春になっても簡単には解けません。太陽の光は水面近くで吸収されてしまい、湖底の氷までは届きにくいからです。毎年の冬のたびに氷が積み残されていけば、湖や浅い海は生き物の住めない場所になっていく——氷が浮くという小さな例外が、水の中の生態系全体を冬から守っている、と言えるのです。

④ 「水そのものが、ちょうどいい」

このサイトでは、距離や傾きや大気など、地球の「設定」のちょうどよさを見てきました。この記事の主役はもっと足元にあります。水という物質そのものが、生命にとって都合のよい例外だらけなのです。氷が浮くこと。4℃で最も重くなること。温まりにくく冷めにくいこと(大きな熱容量)。蒸発するときに大きな熱を奪うこと(汗が体を冷やす仕組み)。地球の住みやすさは、宇宙の設定だけでなく、コップの中の化学にも支えられています。

💡 豆知識:氷山の一角は、本当に「一角」
氷の密度(約0.92)と海水の密度の差から、氷山は全体の約1割だけを海面の上に出し、9割は水面下に隠れています。「氷山の一角」ということわざは、物理的にかなり正確なたとえなのです。ちなみに固体が液体より軽いという水の性質は完全な唯一無二ではなく、シリコンなど、氷と同じようにすき間の多い結晶を作るごく一部の物質にも見られます。例外には例外の仲間がいる——化学の世界も、なかなか奥が深いのです。
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