地球は海が7割の「水の惑星」。その配分を変えると、気候のなめらかさが変わりはじめる。
地球の表面はいま、海が約71%、陸が約29%。この海が、気候の陰の主役です。水は「温まりにくく、冷めにくい」性質を持ち、地球表面の7割を占める海は大気のおよそ1000倍もの熱容量を持っています。夏に受けた熱を溜め込み、冬にゆっくり吐き出す——巨大な保温タンクのおかげで、地球の気温は昼夜でも季節でも、角がとれてなめらかになっています。
スライダーで海を減らすと、この保温タンクが小さくなります。海から遠い内陸ほど、夏はカラカラに暑く冬は凍える大陸性気候になり、一年の寒暖差(年較差)が広がります。実例はシベリア。海から遠く離れたベルホヤンスクやオイミャコンでは、夏は30℃を超え冬は−50℃を下回り、年較差が60℃を超えます。一方イギリスは高緯度でも海と暖流のおかげで冬でも凍りにくい。同じ地球でも、海の近さで気候はこれだけ変わります。
雨のもとになる水蒸気は、海から蒸発して風で運ばれます。だから海から遠いほど水蒸気が届きにくく、大陸の内部には乾燥地帯や砂漠が広がりやすい。海が減った世界では、この「内陸の乾き」がさらに手前まで迫ってきます。かつて全大陸がひとつに集まっていた超大陸パンゲアの内部は、海岸から数千km離れた極端な内陸で、酷暑と乾燥の激しい世界だったと考えられています。
では海100%の「水の惑星」なら天国かというと、そう単純でもありません。気温の変化はきわめておだやかになりますが、陸がないと岩石が雨で削れて出る養分の供給が乏しくなり、大気中のCO₂を長期的に調整する仕組み(岩石の風化)も弱まると考えられます。陸には陸の役割がある。海7割・陸3割という今の配分は、なめらかさと多様さのちょうどいい折り合いなのかもしれません。