地球の軌道は、実はほぼ真円。それをタマゴ型にのばすと、季節の「もう一つの作り方」が現れる。
「地球は楕円軌道を回っている」とよく言われますが、その楕円の潰れ具合(離心率)はわずか0.017。絵に描くとほとんど真円で、太陽の位置が中心からほんの少しズレているだけです。だから太陽との距離は年間で3%ほどしか変わらず、受け取る日射の差も約7%にとどまります。いまの四季は、この距離の差ではなく、地軸の傾きがほぼ全部つくっています。証拠に、地球が太陽にいちばん近づくのは1月上旬——北半球が真冬のときです。
スライダーで離心率を上げると、近日点(いちばん近い)と遠日点(いちばん遠い)の距離差が開きます。近いときは日射が増えて暑く、遠いときは減って寒い——傾きとは別に、惑星全体が同時に暑くなったり寒くなったりする季節が生まれます。火星の離心率は0.093と地球の約5.5倍で、このため火星の南半球の夏は北半球より暑いなど、距離由来の季節差がはっきり出ています。
地球の離心率は一定ではありません。木星や土星の重力に引かれて、約10万年周期でゆっくり「のびたり真円に戻ったり」を繰り返しています。地軸の傾き(約4万年周期)や首振り運動(約2万年周期)と合わさって高緯度に届く日射を変動させ、氷期と間氷期のリズムをつくる——これがミランコビッチ・サイクルです。海底の地層に残る過去の気温変動には、たしかにこれらの周期が刻まれています。あなたが動かしたスライダーは、100万年ぶんの気候のダイヤルでもあるのです。
離心率を彗星並み(0.8前後)まで上げると、近日点では灼熱、遠日点では極寒という、往復びんたのような1年になります。生命にとっては相当に過酷ですが、それでも「距離が変わるだけ」なら、公転の途中に穏やかな季節も挟まります。傾きすぎの記事で見た「半年ずっと昼/半年ずっと夜」とはまた違う、もう一つの厳しさの作り方です。地球が住みやすいのは、傾きも軌道も「ほどほど」だからなのです。