方位磁針のNが南を指す日。地球の磁石は、過去に何度も逆転してきた。次はいつ来てもおかしくない。
地球は、中心にある溶けた鉄の対流(ダイナモ作用)によって、全体が大きな一本の棒磁石のようになっています。方位磁針のNが北を指すのは、このおかげ。もしこの磁石の向きが逆転すれば、方位磁針のNは南を指すようになります。スライダーを動かすと、コンパスの針がゆっくり回って向きを変えていきます。地図の「北」の概念そのものが引っくり返る、不思議な世界です。
地磁気の逆転は、地球の歴史で何度も繰り返し起きてきた事実です。過去1億7000万年の間だけでも500回以上逆転したことが、岩石に残された過去の磁気の記録からわかっています。直近の逆転は約77万年前。その時代の地層が世界で最もよく残っているのが千葉県市原市で、この地層を根拠に約77万4千年前〜12万9千年前が「チバニアン(千葉の時代)」と名づけられました。地質時代の名前に日本の地名がついた、初めての快挙です。
SF映画のように、ある日いきなり極が入れかわるわけではありません。チバニアンの地層の研究では、直近の逆転では約2万年もの間、地磁気が不安定な期間が続いたことがわかっています。逆転の途中では地磁気の強さが今の10分の1ほどまで弱まり、磁極が一つでなく複数あらわれると考えられています。その間、世界のあちこちでオーロラが見られるかもしれません。スライダーの真ん中(50%)が、この「地磁気が弱く乱れた不安定な時期」にあたります。
「バリアが弱まったら危険では?」と思うかもしれません。確かに逆転中は磁気のバリアが弱まり、大気に届く宇宙線が増えます。ただし、バリアが完全に消えるわけではなく、大気そのものも宇宙線を防いでくれるため、生物への影響は限定的と考えられています。実際、過去の逆転が生物の大量絶滅を引き起こした明確な証拠は見つかっていません。むしろ困るのは現代文明のほう——方位磁針に頼る仕組みや、人工衛星・送電網が、弱った磁場と増えた宇宙線の影響を受けやすくなります。