「水の惑星」の水を全部集めても、意外なほど小さな球にしかならない。その絶妙な量が、陸と海を分けている。
地球は表面の約71%が海におおわれた「水の惑星」です。ところが、その水を全部集めて一つの球にしても、直径はわずか約1400kmほど。直径約1万3000kmの地球にくらべると、驚くほど小さな水の玉にしかなりません。海が広く見えるのは、水がたっぷりあるからではなく、地表に薄く広がっているから。海の平均の深さは約3700mで、地球のサイズからすればガラスの表面をぬらす水滴くらいの薄さなのです。
水が地表に薄く広がっているということは、水位の変化に敏感だということです。スライダーで水を減らしていくと、浅い海の底がどんどん顔を出し、大陸はつながり、陸地が一気に広がります。実際、氷期には海の水が氷として陸に固定され、海面が今より100m以上低かった時代がありました。そのとき日本列島は大陸と陸続きで、人や動物が歩いて渡れたと考えられています。水の量が少し変わるだけで、世界地図は描きかわるのです。
逆にスライダーで水を増やすと、低い土地から順に沈んでいきます。さらに増やせば、高い山の頂上だけが島として残る水の世界(ウォーターワールド)へ。陸上の生き物にとっては住む場所が消えていく事態です。宇宙には、地表のほとんどが深い海におおわれた「海洋惑星」も存在すると考えられています。地球が今のように陸と海の両方を持てているのは、水の量がほどよく調整されているからなのです。
陸と海が両方あることには、大きな意味があります。陸の岩石の風化は大気のCO₂を調整して気候を安定させ、広い海は熱をたくわえて気温をなめらかにする。もし水が多すぎて陸がなければ岩石の風化による気候調整が働きにくく、少なすぎて海がなければ気候はとげとげしくなります。生命は海で生まれ、やがて陸へ上がりました。その進化の舞台も、陸と海が両方あってこそ。水の"量"は、地球の物語そのものを左右してきたのです。