MOSHIMO ZUKAN // FILE 38

🌐 もしも北極星が入れかわったら

実はもう入れかわり続けている。地軸は約2万6000年かけてコマのように首を振り、北極星の座は星から星へリレーされていく。

テラちゃん今日も平常運転だよ〜
その時代の“北極星”
ポラリス(いま)
首振りの進み
0%
星空と季節
いまの星空
⭐地軸の先が指す場所(約2万6000年かけて1周する)
ポラリス(いま)
エライ
デネブ
ベガ
トゥバン(5000年前)
これから何年後?
現在
👇スライダーをうごかして、じっけんしてみよう
いま1万3000年後2万6000年後
🔎 地球は赤道がふくらんだ形。月と太陽の引力がそのふくらみを引っぱるので、コマの首振りと同じ動きが生まれるよ
🎬 テラちゃんげきじょう「北極星が入れかわったら」
ホシ
ホシ北極星って、ずーっと動かない星なんでしょ?
テラちゃん
テラちゃん今はね。でも地球の地軸がゆっくり首をふって、北極星は数千年ごとに交代するんだ
ホシ
ホシ交代!? 北極星って、決まった星の名前じゃないの?
テラちゃん
テラちゃんちがうんだ。『今たまたま真北にいる星』にあげる称号なの。次は七夕のベガの番だよ
ホシ
ホシ北極星が役職名だったなんて。おりひめ星が北極星になる時代、想像するとわくわくする。
今夜のポラリスは「当番中」の姿。1万3000年後の子どもたちは、ベガを見て北を知ります。

時間を進めると、北の空はどうなる?

① 北極星は「終身の職」ではない

夜空で唯一動かない星、北極星。しかし「北極星」とは星の名前ではなく、たまたま地軸の延長線上にいる星に与えられる称号です。今その座にいるのは、こぐま座のポラリス。実はポラリスでさえ天の北極にぴったり重なってはおらず、毎晩ごく小さな円を描いています。そしてこの称号は、永遠にポラリスのものではありません。地軸の向きそのものが、ゆっくりと動いているからです。

② 地軸は、コマのように首を振る

地球は完全な球ではなく、自転の遠心力で赤道方向にすこしふくらんだ形をしています。月と太陽の引力はこのふくらみを引っぱり、傾いた地軸を起こそうとする力を生みます。すると地軸は倒れる代わりに、傾き23.4度を保ったまま向きだけをゆっくり回しはじめます。たとえるなら、回っているコマの軸が、傾いたまま円を描いて首を振る動きです。これを歳差(さいさ)といい、地軸の先は約2万6000年かけて空に大きな円を1周します。紀元前2世紀、ヒッパルコスが星の記録の比較から見抜いた、空の最も長いリズムのひとつです。

③ 北極星のリレー

地軸の先が円を描くなら、その円周の近くにある星が、順番に「北極星」になります。約5000年前、ピラミッドが築かれたころの北極星はりゅう座のトゥバンでした。現在はポラリス。約2000年後にはケフェウス座のエライへ、約8000年後にははくちょう座のデネブへ、そして約1万3000年後には、七夕のおりひめ星ベガが北極星になります。ベガは全天でも指折りの明るい1等星なので、未来の旅人にはずいぶん頼もしい目印です(ただし円からややずれた位置なので、精度はいまひとつ)。そして約2万6000年後、称号はふたたびポラリスへ帰ってきます。

④ 星座の季節が、そっくり入れかわる

歳差の影響は北極星だけではありません。地軸の向きが半周した約1万3000年後には、地球の傾きと季節の関係が今と逆になり、いま夏の夜に見える星座が冬に、冬の星座が夏に見えるようになります。オリオン座が夏の星座になる時代が来るのです。さらに、この首振りは氷期と間氷期のリズムを生むミランコビッチ・サイクルの一員でもあります。約2.6万年の歳差、約4万年の地軸の傾きの変化、約10万年の軌道の変化——夜空の目印の交代と氷期の訪れが、同じ「地球のゆらぎ」から生まれているのです。

💡 豆知識:誕生日の星座が「ずれている」のも歳差のせい
歳差で動くのは北極星だけではなく、季節の基準になる春分点も、1年に約50秒角(約72年で1度)ずつ星座の間を移動しています。星占いの「誕生日の星座」は約2000年前の空をもとに決められたため、現代では実際の太陽の位置と星座がほぼひとつ分ずれています。あなたが生まれた日、太陽は「あなたの星座」のとなりにいた可能性が高い——歳差は、星占いの世界にもこっそり首を突っこんでいるのです。
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