月は毎年3.8cmずつ地球から離れている。遠い未来、皆既日食は永遠に見られなくなり、1日はもっと長くなる。
月は地球のまわりをただ回っているのではなく、毎年約3.8cmずつ、少しずつ遠ざかっています。これはアポロが月面に置いた反射鏡へレーザーを当てて往復時間を測ることで、正確にわかっています。1年ではわずかな距離ですが、何億年もの時間が積み重なれば、莫大な変化になります。スライダーを未来へ進めると、月がじわじわと地球から離れていきます。
月が遠ざかる仕組みは、地球の自転と深く結びついています。月の引力が生む潮の満ち引きは、海水と海底の間に摩擦を生み、地球の自転にわずかなブレーキをかけます。そのぶんのエネルギーが月に受けわたされ、月は少し外側へ押し出される——。その結果、地球の1日は少しずつ長くなり、月は遠ざかるのです。実際、地球が6億歳くらいの頃、1日はまだ約22時間しかありませんでした。今の24時間は、月が長い時間をかけてブレーキをかけ続けた結果なのです。
ここに、少し切ない未来があります。今、月と太陽は空でほぼ同じ大きさに見え、だからこそ月が太陽をぴったり隠す皆既日食が起こります。でも月が遠ざかれば、見かけの月はどんどん小さくなり、やがて太陽を隠しきれなくなる。数億年後には、皆既日食は永遠に見られなくなると考えられています。太陽のまわりにリングが残る金環日食だけの世界になるのです。今、私たちが皆既日食を見られるのは、宇宙の長い歴史の中の"たまたまのタイミング"なのです。
月は永遠に遠ざかり続けるわけではありません。はるか未来、地球の自転がうんと遅くなり、地球の自転周期と月の公転周期がぴったり同じになると、エネルギーのやりとりが釣り合って、月の後退は止まると考えられています。そのとき地球と月は、いつも同じ面を向け合ったまま、静かに回るパートナーになります。月との長い長いダンスは、こうしてゆっくり終わりに近づいていくのです。