極地にも氷がなく、平均気温は今より10℃以上高い。恐竜が見上げた空は、CO₂が今の何倍もある「温室地球」だった。
恐竜が栄えた中生代(約2億5千万〜6600万年前)は、地球の歴史でもとくに暖かい時代でした。とりわけ恐竜が大繁栄した白亜紀の前半は、地球全体の平均気温が現在より約6〜14℃も高かったと推定されています。今の地球の平均が約15℃ですから、それより一段も二段も暖かい世界。スライダーを恐竜時代へ動かすと、気温がぐんぐん上がっていきます。
これほど暖かいと、地球の姿そのものが変わります。中生代には北極にも南極にも氷床(氷河)がない、「氷のない地球」が続きました。南極大陸にはワニや恐竜が住み、温帯の森が広がっていたことが化石からわかっています。当時の南極の海水温は約17℃——今の南極海(約2℃)とは別世界です。極地の氷がないぶん海の水が増え、海面は今より高かったと考えられています。
恐竜が吸っていた空気は、今とかなり違います。大気中のCO₂は現在の4〜10倍も高かったとされ、これが強い温室効果を生んで温暖な気候を支えていました。原因は、超大陸パンゲアの分裂にともなう活発な火山活動。火山が吐き出した大量のCO₂が、地球を「温室」にしていたのです。高いCO₂のもとで植物は生い茂り、それを食べる巨大な草食恐竜を支えました。
恐竜時代の温暖な地球は、恐竜や巨大な爬虫類にとっては暮らしやすい楽園でした。ただし、それが人間にとっても良い環境とは限りません。今の私たちの社会や農業は、氷河のある現在の気候に合わせて作られています。大事なのは「暖かいほど良い/悪い」ではなく、生き物はその時代の環境に合わせて栄えるということ。恐竜には恐竜の、私たちには私たちの「ちょうどいい地球」がある——時代をさかのぼる旅は、そのことを教えてくれます。