赤道まで氷に覆われた「白い地球」。これは空想ではなく、実際に何度か起きたとされる出来事だ。
雪や氷が白いのには、気候にとって大きな意味があります。白い面は太陽の光をよくはね返す(反射率=アルベドが高い)ので、そこに届いたエネルギーは地面を温めずに宇宙へ逃げていきます。氷が増えるほど地球は太陽の熱を受け取れなくなり、さらに冷える。冷えればまた氷が増える——。この「寒さが寒さを呼ぶ」暴走を、アイス・アルベド・フィードバックと呼びます。スライダーで氷を増やしていくと、あるところから気温が坂道を転がるように下がりはじめるのは、このためです。
いったん氷が地球のある範囲を超えて広がると、フィードバックが止まらなくなり、氷は赤道へ向かってなだれ込みます。行き着く先が、赤道の海まで凍りつく全球凍結(スノーボールアース)です。証拠はアフリカ南部ナミビアなどの地層に残されており、当時の赤道付近だった場所にまで氷河が作った跡が見つかっています。もっとも新しい大規模な全球凍結は約7億年前(スターチアン氷河時代)で、地球はおよそ5000万年以上ものあいだ凍りついていたと考える研究もあります。
いったん凍ったら、なぜ今の地球は青いのでしょう。鍵は火山でした。全球凍結の間も、海底や陸上の火山はCO₂を吐き出し続けます。ところが地表が氷に閉ざされていると、ふだんCO₂を吸収する岩石の風化がほとんど働きません。行き場を失ったCO₂は大気にたまり続け、数百万年かけて強烈な温室効果を作り出します。やがてそれが限界を超えると、今度は一気に氷が解けはじめる。解ければ黒い地表が顔を出し、太陽光を吸ってさらに温まる——同じフィードバックが、今度は逆回転で猛烈な温暖化を引き起こしたのです。
全球凍結は生命にとって大災害だったはずですが、興味深いことに、この時代のあとに生物は大きく多様化しています。原生代末の全球凍結を抜けた先に、多細胞生物が花開くエディアカラ紀・カンブリア紀が続くのです。極限まで追い詰められた環境が、かえって生命の進化を加速させたのではないか——そう考える研究者もいます。凍りつくことすら、地球の物語の一章だったのかもしれません。